先日のNY出張の時のお話をしましょうか。
2020年のパンデミックをきっかけに渡航ができずにいたのはもう3年にもなるんですね。久しぶりのNY渡航となりました。
そんな中で皆さんにお話しできるトピックがたくさんあるので少しずつお話しをしていきたいと思います。
まずは「未来と美容師」と言うテーマで。
今回の出張で私より5、6歳年上の有名レストランの日本人シェフの方とお話しする機会に恵まれました。NYという世界のトレンドを発信する地で舌の肥えたお客様をお迎えしてきた素晴らしい経歴の方です。
彼とのコミュニケーションの中で、未来の計画に触れてくださったことで、お話を伺いながら共感と同時に僕自身の考えを振り返る良い機会となりました。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、少し私のサロンの紹介をしますと、1999年開業当初からホームページや看板を出していません。お客様はすべて「紹介」だけ来ていただいています。
私が美容師になったきっかけや当時のお話はまたの機会に譲るとして、意識してきたのは「カッコいい」ということ。「カッコいい」というのは単に見た目だけのことではなく、お客様に技術で選んでいただけること、紹介のみで営業できること、経営が健全であることなど多岐にわたります。
今でこそ、経営者という仕事と美容師という仕事を比較すると経営と育成に比重を多くかけているところはありますが、とことん極めていきたい性格と、目の前のお客様に「ありがとう」といっていただける心地よさは今でも大切にしています。
シェフの将来の話でしたよね。
彼はここ数年でNYを離れ、日本で第二のチャレンジ計画を聞かせてくださいました。料理人としての原点に戻って、食材の調達(狩猟も!)から、調理、サーブまでご自身で取り回せるお店を作る準備をされていると。
この気持ち、わかるなぁとうなづきました。
私は優秀なスタッフに恵まれています。オーダーを出せば、ほぼ叶えてくれるレベルの高い仕事をしてくれています。だからこそ、私は最近、意識して勉強をしていかなければいけないなと思っています。来年は月に一度は勉強のための時間を取ろうかなと計画もしています。
アルバイトや新入社員のような存在からスタートした私のキャリアが、紙を積むような努力の積み重ねで高いところまで行き、サポートしてくれるスタッフが育ち、完成度も上がっている。
そんな毎日にとても感謝しています。
でも、それとは別にいつかまた自分の力を試してみたいという気持ちがあるんですよね。今回のシェフとの会話でその気持ちに気づかせていただきました。
時代や流行の中でも変わらずにあるものってありますよね。その一つが、努力を積み上げるということではないかと思います。
努力するっていうと、すこし億劫な、もしかしたら”今の時代”では、流行らないかもしれない言葉かもしれないなって思うんですが、でもやっぱり私は努力なしでは成し得ないことってたくさんあると思います。
近年、ChatGPTなどの出現は目を見張るものがありますよね!すばらしい技術です。多くの人が恩恵を受け、多くの仕事を任せられるようになりますね。そんな時代の流れの中で、子どもたちの将来の夢も「YouTuber」だったり「動画編集」だったりするという話を聞いたことがあります。
この流れを受けて話をすると、努力を積み重ねて技術を磨く「職人」さんってなんとなく距離を取られがちなのかなって少し残念に思ったりもしています。
でもね、ここからが皆さんにお話ししたいところ。
私はね、少し先に職人さんがもてはやされる時代が来ると想像しているんです。話している僕がワクワクします。
近年の人工知能AIの出現はルーティンのような仕事はもちろん、データをストックして最適なタイミングで抽出するような学習型の仕事もこなしてくれるようになってきましたね。外国語を学ばなくても海外旅行で困ることは無くなるでしょう。
でもね、考えてみてください。
言葉をつかえなくても海外旅行はできるけど、もっといえば友人はできるかもしれないけれど親友は難しいと思いませんか?
AIがどれだけ発達して、食材の鮮度を測ることができて、火力が最適であっても、愛する人の作る料理に魅了される心はなくならないと私は思っているんです。
それは、美容師の仕事も同じなんじゃないでしょうか。そして多くの職人さんに共通することなのではないかと思います。心の通じ合う技術が人生を変える。
これを読んでくださっている皆さんに耳寄りの情報があるんです。
実はね、今 職人の世界では優秀な職人さんがその技量を教えるために準備した時間と労力に対して学びたいと手を挙げる人が少ない傾向にあるんですよ。
どういうことか伝わりますか?
そう。今、一流を目指す若手にとって「弟子入り」できる職人さんが選べる可能性が高いかもしれないってことなんですよ。
だから、もしあなたが「そこまでしてやりたくない」っていう場合を除いて、努力をいとわなくて、寝ても覚めてもそのことを続けて磨いていける熱量があるなら、業界においてチャンスが来ているのだと思います。
AI(人工知能)の時代の先に、一流の職人さんが評価される時代が来ます。
その時代が来るまでに「一流」になるための時間の投資ができる最適なタイミングなんじゃないでしょうか。
将来を考える未来のリーダーのみなさんが、このチャンスを自分のものにして20年後に次世代の育成について一緒に美味しいものを食べながら語れることを楽しみにしています。