一度きりを、何度でも──美容室が育む“続く関係性”

美容師という仕事を30年やってきて、今では表参道・南青山にある紹介制美容室AYOMOTのオーナーをしています。日々たくさんのお客様に出会い、スタッフと共にサロンを運営していく中で、最近特に強く感じるのが「続く関係性をどう作るか」というテーマです。

髪を切る。メイクをする。

その瞬間は、お客様も私たちも気持ちが高まっている。でも、その一回で終わってしまう関係では、美容室というビジネスは安定しないし、スタッフの技術も、お客様との信頼も育っていかない。

結局のところ、商売というのは「一回きり」の関係をどれだけ「継続」に変えていけるかに尽きるのではないかと思うんです。

例えば、撮影やブライダルの仕事。

これらはどうしても“その日だけ”で終わるものが多い。でも僕は、そこにこそ可能性があると思っています。たとえばポートレートを撮影したお客様に、「1年後に、また新しい自分を残しませんか」と提案する。

春に撮ったなら秋にも、昼に撮ったなら夜にも。角度や季節が変わるだけで、人の表情も印象も変わる。そこに合わせて、メイクやネイル、ファッションの提案もできる。

ヘアサロンにとっては“撮影”という世界との接点になるし、フォトグラファーにとっても、AYOMOTのような美容のプロから学ぶことで、他のフォトグラファーとの差別化につながるかもしれない。お互いの仕事が「リピート可能な価値」になっていく。

ブライダルも同じです。結婚式というのは一生に一度の晴れ舞台だけれど、その後の関係はどうか。例えば、1周年記念に写真を撮るとか、新婚旅行のアルバムづくりを提案するとか。

さらには、子どもが生まれたタイミングで家族写真を撮るとか。

そうやって「一度の記念日」から「継続する人生の記録」へと展開できれば、関係性は一気に深まる。実際に、結婚式の会食を手がけたカップルが1年後に連絡をくれて、「思い出のレストランでもう一度集まりたい」と言ってくれることもある。

これはもう、技術力とか価格とかを超えた“信頼関係”の話なんです。

この「関係を続ける視点」は、僕らが普段行っているカットやカラーの中にもあると思います。来店時にその日限りの提案をするのではなく、3か月後、半年後、1年後までを見越した提案ができるか。

お客様のライフスタイルや季節、イベントなどに合わせて、先回りして「次の提案」を準備しておく。

それが積み重なると、「この人に任せたい」「このサロンにまた来たい」という気持ちが自然と生まれてくる。

そしてもう一つ大切なのが、リピートを生む仕組みをチームで共有すること。

個人でできることももちろんあるけれど、AYOMOTのようなチームサロンでは、誰か一人のがんばりだけでなく、仕組みや空気感がすごく大事になってくる。

たとえば、全員が「お客様の誕生日月に何か一言添える」「過去の提案履歴を全員が見られる」など、ちょっとした工夫があるだけで、サロンとしての“記憶力”が上がる。

とはいえ、リピートや信頼は、最終的には“あたりまえのことを当たり前にやる”ことの積み重ねです。

報告・連絡・相談。技術がどれだけ高くても、それが抜けてしまえば関係は一気に崩れる。

とても難しい施術をお願いされて失敗した、なんてケースはほとんどない。ほとんどは、「聞いていなかった」「確認しなかった」「なんとなく流してしまった」ことから起きる。

美容は感性の仕事だけど、土台は徹底した確認と準備のうえに成り立っている。その積み重ねがあるからこそ、初めて「続く関係性」が築けるんだと感じます。

AYOMOTでは、毎週のように社内でこのような話をしています。

なぜなら、僕自身がこの30年以上、ずっとお客様との関係性の中で気づいてきたことを、次の世代に引き継ぎたいと思っているからです。今後は、もっと若い世代が主役になるサロンづくりをしていきたい。

現場で盛り上げていくのは、次の主役たち。僕はその“後ろから支える側”として、マーケティングや経営の仕組みをつくっていきたい。

美容室という場所は、人の人生に何度も立ち会える仕事です。

その一回一回を大切にしながら、「また会える関係性」をどう育てていくか。技術より大事なことが、そこにある気がしています。

AYOMOT
鈴木朋弥

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